「商社は激務だから、人の入れ替わりが激しいのでは?」 そう思われがちですが、データを見ると全く逆の実態が浮かび上がります。2025年期の総合商社業界の平均離職率は2.01%。これは100人いて年間2人しか辞めない計算であり、全産業平均(3.92%※)と比較しても約2分の1という低さです。 しかし、企業別に見ると「1%を切る鉄壁の定着率」を誇る企業と、「人材流動性が高い」企業に分かれています。本記事では、公表データをもとに業界の定着率ランキングと、その背景にある各社の戦略を解説します。 ※Career Revealに登録されている企業に基づく
結論:商社は「入ったら辞めない」超・安定業界
- 業界平均離職率(最新年):2.01%(全産業平均 3.92% の約半分)
- 主要企業レンジ:最低 0.96%(三井物産)〜 最高 4.4%(兼松)
- 推移の要約:三井物産と三菱商事は1%未満という驚異的な定着率を維持しています。
- 業界構造:最高峰の待遇と「配属ガチャ」等のリスクが共存していますが、総合的に見て「辞めるメリット」より「残るメリット」が大きい業界です。
- 開示状況:主要8社すべてが最新の離職率を公開しており、透明性は高いです。
業界KPI表:離職率ランキング(2025年期)
| 順位 | 企業名 | 離職率 | 特徴・要因 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 三井物産 | 0.96 % | 業界No.1。「人の三井」の自由な風土が寄与。 |
| 2位 | 三菱商事 | 0.98 % | 1%切り。最高峰の待遇とブランド力。 |
| 3位 | 丸紅 | 1.3 % | 女性活躍や働き方改革で定着率向上。 |
| 4位 | 住友商事 | 1.4 % | 堅実経営で長期雇用が前提。 |
| 5位 | 伊藤忠商事 | 1.6 % | 朝型勤務など規律あるカルチャー。 |
| - | 業界平均 | 2.01 % | 全産業平均(3.92%)の約半分です。 |
| 6位 | 豊田通商 | 2.1 % | トヨタ流の現場主義。 |
| 7位 | 双日 | 3.4 % | 独立支援など「卒業」を推奨する文化。 |
| 8位 | 兼松 | 4.4 % | 自律型人材が多く、流動性が高い。 |
💡 Career Reveal編集部の考察
離職率の低さは「企業のホワイトさ」を示す指標の一つですが、低ければ低いほど良いとは限りません。
三菱・三井の「1%未満」は驚異的ですが、逆に言えば組織の新陳代謝が緩やかであることを意味します。一方、兼松や双日の「3〜4%」は全産業平均に近い水準であり、適度な人材の出入り(社外への挑戦や起業など)がある健全な流動性とも捉えられます。
主要企業の「定着・離職」詳細分析
なぜその数字なのか?各社の離職率の裏側にある事情やカルチャーについては、以下の詳細記事をご覧ください。
🔷 三井物産(0.96%)
業界No.1の定着率。「自由闊達」な風土で、辞める理由が見つからない?
🔷 三菱商事(0.98%)
平均年収2,000万円超えの最強待遇。組織へのロイヤリティは圧倒的。
🔷 丸紅(1.3%)
「時短でも給与減額なし」など、ライフイベントに強い制度が定着を支援。
🔷 住友商事(1.4%)
職掌一本化で公平性を担保。堅実な社風で長期キャリアを築ける。
🔷 伊藤忠商事(1.6%)
朝型勤務などの規律が強い分、合う・合わないがはっきりしている。
🔷 豊田通商(2.1%)
トヨタ流の現場主義。平均勤続年数は17年と長く、安定感はある。
🔷 双日(3.4%)
独立・起業支援制度あり。「卒業」をポジティブに捉えるカルチャー。
🔷 兼松(4.4%)
勤続年数が短め。フルフレックスなどで自律した人材が育ちやすい。
総合商社の事業構造と離職率に影響する要因
総合商社は、トレーディングや事業投資を通じてグローバルにビジネスを展開しており、人材が最大の資産であるため、伝統的に長期雇用を前提とした人事制度が構築されています。平均年収が高く(1,700〜2,000万円)、福利厚生も充実しているため、経済的な理由での離職は少ない傾向にあります。 一方で、ジェネラリストとしての育成方針と、特定の専門スキルを磨きたい個人の志向とのギャップや、駐在・配属のコントロールが難しい点(配属リスク)が、若手・中堅層の離職要因となる場合があります。
総合商社の離職率推移:改善傾向が続く
| 年(期) | 業界平均 | 比較対象(全産業平均) | コメント |
|---|---|---|---|
| 2025年 | 2.01 % | 3.92 % | 業界平均は全産業平均の約半分。極めて安定しています。 |
| 2024年 | 1.93 % | 4.63 % | 業界平均は1%台。全産業平均との差は2.7ポイントでした。 |
| 2023年 | 2.63 % | 4.84 % | 現在よりやや高めでしたが、それでも全産業平均を大きく下回っています。 |
