自動車業界は現在、電動化、自動運転、コネクテッド(CASE)といった技術革新が急速に進む大変革期にあり、研究開発や生産体制の再構築が求められています。本記事では、主要な完成車メーカーおよび部品メーカーの開示データに基づき、業界の平均残業時間やその背景にある構造、および各社が進める労働時間適正化の取り組みを比較解説いたします。

「自動車業界の残業は多いのか?どの会社が比較的ホワイトなのか?」という疑問に、データと一次情報に基づいて答えます。

結論:自動車業界の残業は「月20時間」が標準ライン

  • 業界平均残業時間(最新年):20.13時間/月
  • 主要企業レンジ:19.00時間/月(デンソー)〜21.10時間/月(トヨタ)
  • 推移の要約:ここ数年は20時間〜22時間前後で安定して推移しています。
  • 構造要因:新車開発のピーク時や、CASE対応のR&D部門で負荷が高まりやすい傾向があります。

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自動車業界主要6社の残業時間比較(企業別データと個別解説)

各社の残業時間の実態、推移、削減の取り組みについては、以下の個別記事で詳しく解説しています。

企業名 平均残業時間 詳細分析
トヨタ自動車 21.10 時間 詳細を見る ↗
日産自動車 20.30 時間 詳細を見る ↗
株式会社デンソー 19.00 時間 詳細を見る ↗
本田技研工業 非公表 詳細を見る ↗
スズキ 非公表 詳細を見る ↗
SUBARU 非公表 詳細を見る ↗

自動車業界の事業構造と残業への影響

自動車業界の事業構造は、企画・開発、試作、量産、販売という長いサイクルで成り立っており、これが労働時間に影響を与えます。特に、新型車のモデルチェンジ周期に合わせて開発部門や設計部門に業務が集中する傾向があります。また、グローバルな生産体制を持つ企業では、海外拠点やサプライヤーとの連携、時差を跨いだコミュニケーションが必要となり、業務調整やマネジメントに起因する残業が発生しやすくなります。さらに、電動化や自動運転といった新技術(CASE)への対応は、従来の業務に加え、ソフトウェア開発などのR&D負荷を高めています。

自動車業界の残業KPI表(平均残業時間の水準)

自動車業界と全産業平均の残業時間推移比較データ分析(2022~2025年期)
指標 業界平均(2025年) 最低値(2025年) 最高値(2025年) コメント
平均残業時間 20.13 時間/月 19.00 時間/月 21.10 時間/月 公開データを持つ3社の平均は20.13時間/月であり、企業間で比較的小さな差に収まっています。

※本ページの業界データは Career Reveal 登録企業の公開情報に基づきます。

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自動車業界の残業時間推移:ここ数年のトレンド

年度 業界平均(時間/月) 比較対象(全産業平均) コメント
2025 20.13 18.08 業界平均は20.13時間/月で、全産業平均(18.08時間/月)を上回る水準でした。公開3社の平均値として安定したレンジにあります。
2024 22.07 19.03 業界平均は全産業平均(19.03時間/月)より高く、直近4年で最も高い数値でした。
2023 20.90 18.79 業界平均は全産業平均(18.79時間/月)を上回る水準で推移しました。開発・生産サイクルの影響により残業が増えやすい業界構造です。
2022 20.93 20.12 業界平均は全産業平均(20.12時間/月)とほぼ同水準で、差が小さい年度でした。

💡 Career Reveal編集部の考察

全産業平均(約18時間)と比較すると、自動車業界(約20〜22時間)は常に少し高めの水準で推移しています。これは「ブラックだから」というよりは、「グローバル競争が激しく、常に開発投資(仕事)がある」という業界の活況を示しているとも言えます。
サービス残業が横行しているわけではなく、主要各社ともPCログ管理などで適正化が進んでいるため、「働いた分はしっかり記録される」環境である可能性が高いです。

自動車業界で残業が発生しやすい構造

自動車業界において残業は、新車開発や量産立ち上げ時期に業務量が集中し、発生しやすい構造があります。特に、電動化やソフトウェア開発といった新しい技術分野では、技術的な課題解決のための研究開発(R&D)業務が集中しやすく、結果的にR&D部門や設計部門で労働負荷が高まる傾向が見られます。

自動車業界6社の残業時間に関する情報開示状況

主要6社のうち、2025年の平均残業時間の具体的な数値を公表しているのは、トヨタ自動車株式会社(21.10時間/月)、日産自動車株式会社(20.30時間/月)、株式会社デンソー(19.00時間/月)の3社です。本田技研工業株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARUは平均残業時間の具体的な数値は公表データなしです。また、残業時間の内訳(部門別や職種別)に関する詳細なデータは、公表データなしです。

自動車業界各社の残業削減施策と働き方改革の事例

主要各社は、労働時間の適正化と生産性向上を目指し、以下のような取り組みを推進しています。

  • トヨタ自動車株式会社:時間管理システムでPCのログオン・ログオフ時間を把握し適正な労働時間管理を実施。在宅勤務を可能とするFTL(Free Time & Location)制度を導入しています。
  • 本田技研工業株式会社:1970年代から労使で年次有給休暇の繰越日数を超えてカットされる日数をゼロにする「年次有給休暇カットゼロ運動」に取り組んでいます。出社時のコアタイムを撤廃し、マネジメント判断のもとでリモートワークの有効活用を可能にしています。
  • 日産自動車株式会社:毎月最終金曜日に15時退社を推奨する「Happy Friday」を2017年2月から導入しています。PCのON/OFF時間などを活用した管理システムにより、労働時間の適正化を図っています。
  • スズキ株式会社:付与後2年間の有効期限を過ぎた有給休暇日数を最大40日まで積み立てて利用できる「多様な働き方を可能にするライフサポート休暇」を提供しています。
  • 株式会社SUBARU:祝日や休暇取得奨励日と合わせて3日連続で有給休暇を取得できる「ウルトラ連休」の設定を推進し、有給取得率の向上に繋げています。
  • 株式会社デンソー:従来は経営役員以上が対象だった譲渡制限付株式を約47,000人の社員にまで拡大導入し、社員の長期的な挑戦意欲と生産性向上を促進しています。

【面接対策】自動車業界の残業について聞く時の「逆質問」例

残業時間は気になりますが、ストレートに聞くと印象が悪くなるリスクがあります。ポジティブな聞き方で実態を探りましょう。

Q. 生産性向上の取り組みを聞く

「業界平均が20時間程度と伺いましたが、御社では限られた時間で成果を出すために、チームや個人でどのような工夫やツール活用をされていますか?」

💡 ポイント:「効率的に働きたい」という意欲を見せつつ、現場の忙しさを間接的に確認できます。

自動車業界の残業が気になる人に向いている人・向かない人

  • 向いている人:平均残業時間が業界平均(20.13時間/月)より少ない、または安定している企業(例:デンソー 19.00時間/月)で働きたい方。有給取得の促進制度(例:ウルトラ連休、Happy Friday)を通じて、計画的に休暇を取得しメリハリをつけて働きたい方。
  • 向かない人:残業時間の具体的な数値を開示していない企業(例:本田技研工業株式会社、スズキ株式会社、株式会社SUBARU)を避け、労働時間に関する透明性を最優先する方。新車開発やR&Dといった業務負荷が集中しやすい部門での長時間労働を避けたい方。

自動車業界6社の一次情報(公式資料へのリンク集)

トヨタ自動車

本田技研工業(Honda)

日産自動車

スズキ株式会社

株式会社SUBARU

株式会社デンソー

出典

Career Reveal / 有価証券報告書 / サステナビリティレポート / ESGデータブック / 統合報告書