「商社マン=24時間戦う」というイメージは、もはや過去のものです。 Career Revealに登録されている企業の最新データ(2025年期)を分析したところ、総合商社業界の平均残業時間は19.3時間でした。 これは2025年10月の厚生労働省「毎月勤労統計調査」における全産業平均(所定外労働時間:13.7時間)を上回る水準です。 一方で、平均年収が1,700〜2,000万円クラスの高待遇業界であることを踏まえると、時間あたりの付加価値(生産性)の高さが際立つ結果と言えます。 しかし、その中身を見ると「月10時間以下の超効率派」と「月30時間超のバリバリ派」に二極化が進んでいます。本記事では、公表データをもとに業界の現在地と各社の立ち位置を解説します。
結論:商社はもはや「激務」ではないが「二極化」している
- 業界平均:19.3時間/月(全産業平均13.7時間より+5.6時間、約1.41倍)
- 最短:住友商事(9.85時間)、伊藤忠商事(11.0時間)
- 最長:三菱商事(31.0時間)、三井物産(27.6時間)
- レンジ:最短(9.85時間)〜最長(31.0時間)で約3.15倍の開き
- 特筆:双日は残業時間を非公表としていますが、有給取得率77.6%という業界トップクラスの数字を誇ります。
業界KPI表:残業時間ランキング(2025年期)
| 順位 | 企業名 | 残業時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 住友商事 | 9.85 時間 | 業界最短。メリハリ重視。 |
| 2位 | 伊藤忠商事 | 11.0 時間 | 「朝型勤務」で夜残業を禁止。 |
| 3位 | 丸紅 | 15.8 時間 | ABWやリモートで効率化。 |
| - | 全産業平均 | 13.7 時間 | 厚生労働省「毎月勤労統計調査」(2025年10月) |
| 4位 | 兼松 | 18.3 時間 | フルフレックス活用。 |
| - | 商社業界平均 | 19.3 時間 | 全産業平均に近づいています。 |
| 5位 | 豊田通商 | 22.4 時間 | 現場負荷はやや高め。 |
| 6位 | 三井物産 | 27.6 時間 | 個の裁量大。DXで改善中。 |
| 7位 | 三菱商事 | 31.0 時間 | 仕事量も報酬もNo.1。 |
| - | 双日 | 非公表 | 有給取得率77.6%は業界トップ級。 |
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⚡ 主要商社を一括比較して表を作る(無料)残業時間の推移:全産業平均に肉薄
商社業界の平均と、Career Reveal全登録企業の平均(全産業平均)の推移比較です。その差が年々縮まっていることがわかります。
| 年度 | 商社業界平均 | 全産業平均 (Career Reveal全体) |
差分 |
|---|---|---|---|
| 2025 | 19.30 時間 | 18.08 時間 | +1.22 時間 |
| 2024 | 19.50 時間 | 19.03 時間 | +0.47 時間 |
| 2023 | 19.90 時間 | 18.79 時間 | +1.11 時間 |
💡 Career Reveal編集部の考察
「商社は激務」というのは、もはや過去の偏見かもしれません。
当サイトのデータベースでは、商社の平均残業は19.3時間で、Career Reveal掲載企業平均(18.08時間)と差は小さく、推移でも平均との差が縮まっています。
さらに外部ベンチマークとして、厚生労働省「毎月勤労統計調査」の全産業平均(所定外労働時間:13.7時間)と比べても、商社の働き方は「長時間一辺倒」ではなく、企業別に大きく分かれています。
平均年収が全産業平均の3倍近い1,700〜2,000万円であることを考慮すれば、「労働時間あたりの対価(コスパ)」は日本最高峰と言えるでしょう。
主要企業の「働き方」詳細
数字の裏側にある、各社の具体的な働き方やカルチャーについては以下の詳細記事をご覧ください。
🔷 伊藤忠商事(11.0時間)
「20時以降は残業禁止」。徹底した朝型勤務が生む、圧倒的な高効率の秘密とは?
🔷 住友商事(9.85時間)
業界最短の労働時間。「メリハリある働き方」で実現する、堅実なワークライフバランス。
🔷 三菱商事(31.0時間)
残業は長いが、年収は2,000万超え。世界規模の激務と、それに見合う最強の報酬。
🔷 三井物産(27.6時間)
「人の三井」は個人の裁量重視。DXによる業務効率化で、働き方はどう変わったのか?
🔷 丸紅(15.8時間)
完全リモートワークもOK。ABW(フリーアドレス)導入で進む、最も先進的な働き方。
🔷 兼松(18.3時間)
フルフレックス利用率80%超。自律したプロフェッショナルが育つ自由な環境。
🔷 豊田通商(22.4時間)
「20時強制消灯」でも残る忙しさ。トヨタ流の現場主義と健康経営の両立。
🔷 双日(非公表)
残業時間は非公表だが、有給取得率は77.6%と業界トップ級。健康経営の指標は極めて優秀。
業界のトレンド:なぜ残業は減っているのか?
商社業界全体の残業時間は、DXの進展や働き方改革により年々減少しています。
- DXの進展:貿易実務などの定型業務がデジタル化され、人手が不要になりつつあります。
- 強制力の導入:伊藤忠の「朝型勤務」や豊田通商の「20時消灯」のように、会社主導で物理的に時間を制限する動きが定着しました。
【面接対策】商社の残業について聞く「逆質問」例
「残業はありますか?」と直球で聞くのは避け、働き方への意識が高いことをアピールする質問に変換しましょう。
Q. 生産性向上の工夫について聞く
「業界全体で残業時間が減っていると伺いました。限られた時間の中で高い成果を出すために、現場では具体的にどのような効率化やツールの活用が進んでいるのでしょうか?」
💡 ポイント:「楽をしたい」のではなく「効率的に成果を出したい」という意欲を伝えます。
Q. 繁忙期のチームワークについて聞く
「決算期やプロジェクトの佳境など、どうしても業務が集中する時期はあるかと思います。そうした繁忙期に、チーム内でどのように連携して乗り越えているのか、職場の雰囲気を教えていただけますか?」
💡 ポイント:忙しい時期があることを理解した上で、協調性をアピールできます。
総合商社の残業に関するよくある質問(FAQ)
- Q. 総合商社の中で一番残業が少ない(ホワイトな)企業はどこですか?
- 2025年期のデータでは、住友商事(9.85時間/月)と伊藤忠商事(11.0時間/月)が圧倒的に少ないです。業界平均(19.3時間)の約半分という水準であり、ワークライフバランスを重視する方には魅力的な環境と言えます。
- Q. 商社は「激務」というイメージですが、実際はどうですか?
- かつてのような不夜城のイメージは過去のものです。業界平均は19.3時間で、厚生労働省「毎月勤労統計調査」の全産業平均(所定外労働時間:13.7時間)を上回る一方、企業別には大きな差があります。 三菱商事(31.0時間)や三井物産(27.6時間)のように業務量が多い企業もあれば、住友商事(9.85時間)や伊藤忠商事(11.0時間)のように月10時間台の企業もあり、二極化しています。
- Q. 残業時間が減ると、年収も下がりますか?
- 必ずしもそうではありません。例えば伊藤忠商事は残業時間が極めて短いですが、平均年収は1,800万円を超えています。これは「早朝勤務手当(深夜割増と同率)」の支給や、業績連動ボーナスの比率が高いためです。商社業界では「残業代で稼ぐ」のではなく、「成果を出してボーナスで稼ぐ」スタイルが主流です。
まとめ:あなたに向いているのはどっち?
- 「時間はコスト」効率派:
- 伊藤忠商事・住友商事・丸紅がおすすめ。全産業平均以下(または同等)の労働時間で、トップクラスの報酬を得られます。
- 「時間は投資」没頭派:
- 三菱商事・三井物産がおすすめ。仕事の規模や報酬のリターンを最大化するために、時間を惜しまず働けます。
- 「自律と健康」バランス派:
- 双日・兼松・豊田通商がおすすめ。数字での管理よりも、有給取得やフレックス活用など、個人の裁量と健康を重視する働き方です。
一次情報(公式資料へのリンク集)
三菱商事株式会社
三井物産株式会社
伊藤忠商事株式会社
住友商事株式会社
丸紅株式会社
双日株式会社
豊田通商株式会社
兼松株式会社
出典
Career Reveal(自社データベース) / 各社有価証券報告書 / サステナビリティレポート / ESGデータブック / 統合報告書
