トヨタ自動車株式会社の働き方とワークライフバランス(WLB)について、平均残業時間、有給休暇取得率、離職率、人材投資といった定量データと、柔軟な働き方を支える各種制度に基づき、多角的に解説いたします。同社は、業界の変革期に対応しつつ、従業員が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備に注力しています。

結論

  • 残業:会社21.10時間/月 / 業界20.13時間/月
  • 有給:会社88.40% / 業界89.72%
  • 離職:会社0.9% / 業界2.06%
  • 柔軟な働き方:在宅勤務を可能とするFTL(Free Time & Location)制度や時短勤務制度を導入し、時間や場所にとらわれない働き方を推進しています。
  • WLB総評:業界平均に比べて低い離職率(0.9%)と、男性育休取得率67.00%の達成、介護退職者向けのキャリアカムバック制度など、育児・介護との両立支援に注力しています。

企業と業界の特徴

トヨタ自動車株式会社は、自動車・輸送用機器業界を代表するグローバル企業であり、世界規模で事業を展開しています。業界全体は、CASE技術(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応が急務であり、これに伴う技術者のリスキリングや、開発負荷の増大に対応するための労働時間の適正化、多様な働き方の推進が重要な課題となっています。

KPI表

指標 会社値(2025年) 業界平均(2025年) コメント
平均残業時間 21.10 時間/月 20.13 時間/月 業界平均(20.13時間/月)とほぼ同水準で推移しています。
有給休暇取得率 88.40 % 89.72 % 業界平均(89.72%)に近い高い取得率を維持しています。
離職率 0.9 % 2.06 % 業界平均(2.06%)と比較して非常に低く、高い定着率を示しています。
人材投資(研修時間/人・年) 6.9 時間/人・年 11.38 時間/人・年 業界平均(11.38時間/人・年)を下回っています。
人材投資(総研修費用) 730.00 百万円/年 公表データなし 2025年の総研修費用は730.00百万円/年でした。

働き方の詳細

労働時間

2025年の平均残業時間は21.10時間/月であり、2022年(19.70時間/月)、2023年(19.10時間/月)から増加傾向にありますが、依然として業界平均に近い水準です。同社は、時間管理システムを用いて出退勤時刻やPCのログオン・ログオフ時間を把握し、上司が確認・承認することで、適正な労働時間管理を行っています。また、柔軟な働き方の推進により、長時間労働の削減と生産性向上を図っています。

休暇制度・有給取得

2025年の有給休暇取得率は88.40%です。年次有給休暇取得状況をシステムで「見える化」し、上司と部下の確実なコミュニケーションを通じて休暇の取得を促す取り組みを行っています。男性の育児休業取得率は2025年に67.00%であり、2023年労使協議会にて希望者全員のパートナー育休取得率100%を目標に掲げ、取得促進セミナーの実施や上司面談での取得意向確認を導入しています。

柔軟な働き方

時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進するため、在宅勤務を可能とするFTL(Free Time & Location)制度や時短勤務制度を導入しています。これにより、育児や介護と仕事の両立を支援しています。また、配偶者の転勤や介護によりやむを得ず退職した従業員向けに、再雇用機会を提供するキャリアカムバック制度を導入し、多様な働き方を支援しています。

ワークライフバランスまとめ

トヨタ自動車株式会社は、WLB向上に資する制度整備が充実しています。平均残業時間は業界水準にあり、有給取得も促進されています。特に、男性の育児参画推進や、介護を事由とする退職者を対象とした再雇用制度(キャリアカムバック制度)の存在は、従業員がライフイベントを経ても長期的にキャリアを継続できる環境を示しています。さらに、性的指向や性自認を尊重する風土醸成のため、同性婚・事実婚に対し法律婚と同等の社内制度を2020年7月より適用するなど、多様な従業員が働きやすい環境整備が進められています。

成長環境

新入社員から役員まで、各階層で期待される役割に応じた研修を体系的に実施し、継続的な成長を支援しています。総研修費用は2025年に730.00百万円/年、一人当たりの研修時間は6.9時間/人・年です。従業員が自身の役割や学習意欲に応じて選択できる自律選択型の教育体系への移行を進めており、社内教育コンテンツを集約したポータルサイトやオンライン学習サービスを充実させています。また、若手社員の早期育成のため、海外現地法人や大学院などへ1~2年間派遣する修行派遣プログラムも実施しています。モビリティカンパニーへの変革に向け、ソフトウェア人材など新領域の専門人材獲得・育成を強化する「リソーセスシフト」も推進しています。

社風

労使相互信頼・相互責任の関係を原則とし、労使懇談会や労使協議会を年数回開催することで、健全な労使関係の構築と一体感の醸成を図る社風です。従業員エンゲージメントスコアは2025年に60.00ptです。また、公正な評価・処遇制度を運用しており、年齢や資格を問わず頑張った人が報われる制度へ2019年にシフトしています。ダイバーシティ研修や、全管理・監督者を対象としたアンコンシャスバイアス研修を実施することで、多様性への理解促進に努めています。2025年には「生きがい・やりがいを実感できている従業員割合」が60.00%でした。

まとめ

  • 向いている人:離職率が極めて低く(0.9%)、長期的な安定就労を重視する方。FTL制度やキャリアカムバック制度など、育児・介護との両立支援制度を積極的に活用したい方。
  • 向かない人:研修時間/人・年が業界平均(11.38時間/人・年)を下回る傾向にあるため(会社値 6.9時間/人・年)、企業からの手厚い研修や能力開発投資を重視する方。

出典

Career Reveal / 有報 / サステナレポート