DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴い、人材獲得競争が金融業界でも激化しています。
「メガバンクや大手金融機関は安定していて人が辞めない」と言われてきましたが、最新データを見るとその傾向に大きな変化が起きています。本記事では、主要メガバンク・大手金融7社の離職率を業界平均と比較しつつ、業界共通の「流動化トレンド」と企業ごとの定着率の差をデータで読み解きます。

※本記事における「業界平均」は、メガバンク・大手金融7社(三菱UFJFG、三井住友FG、みずほFG、ゆうちょ銀行、東京海上HD、MS&AD、第一生命HD)の公開データを基に算出しています。

結論:メガバンク・大手金融業界は「定着力に大きな差」が出始めている

  • 最新業界平均(2025年):5.33%。3年前の3.14%から1.7倍に上昇しており、業界全体で離職率が高まっています。
  • 業界内格差:最低は東京海上HD2.8%、最高は第一生命HD13.3%と、業界内で4倍以上の開きがあります。
  • 銀行系トレンド:メガバンク3社の中ではSMFG3.0% / MUFG5.1% / みずほFG非公表と、明暗が分かれています。
  • 保険系トレンド:損保2社(東京海上HD2.8% / MS&AD3.3%)は業界平均を大きく下回る一方、生保(第一生命HD13.3%)は営業職構造の影響で突出して高い水準です。
  • 要因:DX人材の外資IT・コンサルへの流出、ジョブ型雇用の導入、若手の早期離職傾向が業界共通の課題となっています。

メガバンク・大手金融業界の離職率ランキング(2025年)

メガバンク・大手金融7社の離職率ランキング(2025年)。三井住友FG3.0%、東京海上HD2.8%、MS&AD3.3%、ゆうちょ銀行4.5%、業界平均5.33%、三菱UFJFG5.1%、第一生命HD13.3%、みずほFG非公表。
順位 企業名 離職率 業界平均との差 評価
1位 三井住友FG(SMFG) 3.0 % -2.33 pt 業界最高水準の定着力。メガバンク3社中で最低。
2位 東京海上HD 2.8 % -2.53 pt 損保業界最大手。安定した定着力を持つ業界最低水準。
3位 MS&AD 3.3 % -2.03 pt 損保大手。長い勤続年数(22.9年)を背景に低水準。
4位 ゆうちょ銀行 4.5 % -0.83 pt 政府系の安定基盤と勤続21.0年が定着を支える。
5位 三菱UFJFG(MUFG) 5.1 % -0.23 pt 業界平均並み。グローバル展開で人材流動性も高い。
- 業界平均 5.33 % - 3年で1.7倍に上昇するトレンド。
6位 第一生命HD 13.3 % +7.97 pt 生保特有の営業職離職率影響あり。職種構造が他社と異なる。
- みずほFG 非公表 - 離職率の具体的な数値は公開されていません。

💡 Career Reveal編集部の分析

SMFG・東京海上HD・MS&ADの3社は業界平均(5.33%)を大きく下回り、メガバンク・大手金融の中で「特に人が辞めない企業」と言えます。
一方、第一生命HDの13.3%は突出して高い水準ですが、これは生命保険業界特有の営業職構造(個人保険営業の入替が活発)の影響が大きく、コーポレート職種だけで見ればより低い水準と推測されます。みずほFGが非公表である点も含め、同じ「金融業界」でも企業ごとに開示スタンスや人材構造に大きな差があることが、データから読み取れます。

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業界全体の離職率推移:3年で1.7倍に上昇

業界平均の離職率は2022年から2025年にかけて、ほぼ毎年上昇しています。「金融業界=終身雇用」の常識が変わりつつあることを示すデータです。

年度 業界平均離職率 変化 主な背景
2025年 5.33 % +1.35 pt 過去最高水準。DX人材流出・ジョブ型導入が加速。
2024年 3.98 % +0.40 pt 緩やかな上昇。中堅層の他社流出が増加。
2023年 3.58 % +0.44 pt 業界の流動化が顕在化し始めた年。
2022年 3.14 % - 従来型の定着率水準でスタート。

主要企業の「定着」と「代謝」の要因

三井住友FG:業界トップの定着力

離職率3.0%は業界最低水準。自律的なキャリア形成支援と男性育休104.4%・女性管理職26.1%の両立支援で、辞めにくい環境を実現。

👉 SMFGの離職率データ詳細 ↗

東京海上HD:損保業界の安定基盤

離職率2.8%(2025年)。損保業界最大手として、長期キャリア形成支援と高い処遇水準(平均年収1,535万円)で人材を留める。

👉 東京海上HDの離職率データ詳細 ↗

MS&AD:勤続22.9年の長期定着

離職率3.3%。平均勤続年数22.9年と業界最長で、安定したキャリアパスを志向する人材の定着が際立つ。

👉 MS&ADの離職率データ詳細 ↗

ゆうちょ銀行:政府系の象徴的安定

離職率4.5%。残業時間6.7時間/月と業界最少水準で、定型業務中心の安定した働き方が長期勤続(21.0年)につながる。

👉 ゆうちょ銀行の離職率データ詳細 ↗

三菱UFJFG:流動化が進む業界平均並み

離職率5.1%は業界平均並み。グローバル展開規模が大きく、海外人材・DX人材の流動性が高い構造。

👉 MUFGの離職率データ詳細 ↗

第一生命HD:生保営業構造の影響

離職率13.3%は業界突出。生命保険営業職の入替が活発な業界特性が反映されている。コーポレート職種は別の水準と推測される。

👉 第一生命HDの離職率データ詳細 ↗

離職が業界全体で上昇している3つの構造的要因

メガバンク・大手金融業界の離職率が業界共通で上昇している背景には、以下の3つの構造的要因があると考えられます。

  • DX人材の業界横断流動化:金融業界はDX推進に伴いデジタル・データ人材の需要が急増していますが、同時にこうした人材の外資系IT・コンサルへの転出も活発化しています。給与水準・キャリアパスの両面で他業界との競合が激化しています。
  • ジョブ型雇用への転換:従来の総合職一括採用・ジョブローテーション中心の人事から、ジョブ型・専門性重視への転換が進んでおり、社員のキャリア観も「会社中心」から「自分中心」へとシフト。社内でキャリアが描けない場合の早期離職が増えています。
  • 若手の早期離職傾向:20代の若手社員にとって、銀行・保険業界の長期ジョブローテーションは「自分のキャリアをコントロールしづらい」と感じやすく、3年以内の早期離職が業界共通の課題となっています。

離職理由の公開状況

メガバンク・大手金融7社のうち、自己都合/会社都合の内訳や年代別・職種別の詳細な離職理由を公表している企業はありません。各社は離職率の総合値のみを開示しており、その背景については定性的な「人事戦略の方向性」として説明する形式が一般的です。

ただし、エンゲージメントスコア・男女別育休取得率・女性管理職比率などの人的資本データは、各社とも積極的に開示しており、これらの間接指標から「働きやすさ・働きがい」の実態を推測することは可能です。

【面接対策】離職率トレンドを踏まえた「逆質問」例

業界全体の流動化を前提に、個社のスタンスを問う質問が効果的です。

Q. 人材流動化への対策について聞く

「金融業界全体として、DX人材や若手社員の流動性が高まっている中、御社では優秀な社員に長く活躍してもらうために、報酬以外の面(働きがい・キャリア形成支援・カルチャー)でどのような差別化を図られていますか?」

💡 ポイント:単なる条件面だけでなく、組織の魅力や成長支援に関心があることを示せます。


Q. 若手のキャリア形成支援について聞く

「業界全体で若手の早期離職が課題となる中、御社では入社3年以内の若手社員が、自分のキャリアを自律的に設計できるよう、どのような支援制度や仕組みを整備されていますか?」

💡 ポイント:業界トレンドへの理解と、自律的にキャリアを築きたい意欲を示せます。

まとめ:業界選び・企業選びのヒント

メガバンク・大手金融業界の離職率は、3年で1.7倍に上昇するなど業界全体で流動化が進んでいますが、企業ごとの差は依然として大きい状態です。志向性別に企業選びのヒントを整理します。

  • 「絶対に安定して長く働きたい」なら、東京海上HD(2.8%)・三井住友FG(3.0%)・MS&AD(3.3%)の3社が業界平均を大きく下回る定着型企業として有力候補です。
  • 「政府系の象徴的安定を求める」なら、ゆうちょ銀行(4.5% / 残業6.7時間)が、業界の中でも特異な安定基盤を持つ選択肢です。
  • 「変化のある環境でキャリアを築きたい」なら、三菱UFJFG(5.1%)はグローバル展開と人材流動性のバランスを持つ企業として候補になります。
  • 「営業職としてキャリアを積みたい」場合、第一生命HD(13.3%)の離職率は構造的なものを含むため、職種別の実態を面接で確認することが重要です。

「離職率が低い=良い会社」とは一概に言えなくなっています。年収水準・働き方の柔軟性・残業実態などのデータと併せて、ご自身のキャリア志向(安定か、挑戦か)に合った企業を選ぶことが重要です。

あわせて、メガバンク・大手金融業界の他テーマもチェックすることで、業界全体の人的資本データを立体的に把握できます。

🏢 メガバンク・大手金融業界全体の残業ランキングを見る

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出典

Career Reveal / 各社有価証券報告書 / 統合報告書 / サステナビリティレポート / ESGデータブック